(世界文化遺産・国宝である奈良の元興寺には、今から1400年前、建立された飛鳥時代当時の瓦が今も使われています)
■災害と瓦屋根の関係を検証
瓦は3000年~5000年という歴史を持つ伝統的な建築材料ですが、近年「瓦屋根は重く、地震で家屋が倒壊しやすい」という声も聞かれるようになりました。しかし、地震大国の日本で長年使われてきた瓦が、なぜ最近になって「地震災害に弱い」と言われるようになったのでしょうか?
そこでこの記事では、本当に瓦屋根の家は地震の際に倒壊しやすいのかなど、災害時に着目しつつ、瓦の性能と近年の進化について検証していきます。
■倒壊の原因は瓦ではなく、建物の老朽化、工法、地盤
「地震での家屋倒壊」というと、崩れた家屋の上に瓦が散乱したテレビ映像を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「瓦が崩れ落ちた全壊の家屋」の映像は象徴的で、地震のニュース等で繰り返し放送されるため、「瓦屋根の家は地震で倒壊しやすいものだ」というイメージが世間に広まるようになりました。
しかし、家屋倒壊の原因は瓦ではありません。実は、建物の劣化や工法、地盤の弱さに原因があるのです。
1995年の阪神・淡路大震災後に内閣府が作成した資料によると、建物の被害があったのは「建築基準法・同施行令の基準を満たしていない建物(既存不適格建物)」「特に老朽化した古い建物」「1981年以前に建築された建物」に多かったのです。
さらに資料には、間違った台風対策として普及してしまった「屋根に土をのせる古い工法」が家屋倒壊の原因の一つとしてあげられるなど、「建物の老朽化や誤った工法、地盤に問題があった」と指摘されています。この中に、「瓦の重さが家屋倒壊の原因になった」との記述はありません。
(参照:防災情報のページ 災害史・事例集 阪神・淡路大震災教訓情報資料集【03】建築物の被害・内閣府|http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/detail/1-1-3.html)
また、1981年改正の新耐震基準では、「震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないこと」が求められ、屋根の重さも計算に入れた構造が義務づけられました。屋根重量に応じて壁量、柱・梁の太さが決められており、屋根が重ければそれに耐える構造が求められるようになっていました。実際に、基準を満たした建物では、瓦や屋根が重いからといって被害が出ることはなかったのです。
このように、「地震災害時の家屋倒壊は、瓦が原因である」というイメージはテレビ映像から作られたものであり、「瓦屋根は危険だ」という誤解が広まってしまったのです。
■建築基準法の改定と、必要最低限のガイドライン工法
また、阪神・淡路大震災で建物被害が多かったことから2000年に「建築基準法」が改正され、それ以降に建てられた住宅の構造は、さらに安心できるものになりました。
これに伴い、2001年には「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」も発行され、瓦屋根は従来の工法に比べて比較的強固に固定するようになったため、瓦屋根の耐震性・耐風性が向上しました。2004年にはガイドライン工法の実大耐震実験も実施され、瓦屋根の建物は阪神・淡路大震災クラスの地震であればなんとか耐えうることが実証されています。
■進化する瓦「防災瓦」「軽量瓦」
さらに、災害に備えて瓦自体も日々進化しており、「地震や台風に強い瓦」が開発されています。
防災瓦は、フックやジョイントによって瓦と瓦が噛み合う構造で、隣接する瓦が組み合うため風やめくれに強くなっています。さらに、釘を通す穴が空いているため、強固に設置できます。そのため災害時に瓦が落下しにくく、飛散して近隣に被害を与えてしまう可能性も低減できます。災害や経年によるズレが少ないので、メンテナンス費も抑えられます。
・軽量瓦
(井野瓦工業株式会社|2.2kg/枚の「ライトJ2.2」)
地震による家屋の倒壊は、瓦の重さが原因ではありませんが、そのイメージをお持ちの方が多いのも事実です。そこで瓦への不安を取り除き、建物の負担を軽減するため、瓦の軽量化も進んでいます。
階段状の構造にすることで1枚あたり2.2kgまで軽量化(一般的な瓦は約3kg/枚)した井野瓦工業株式会社の「ライトJ2.2」や、中空構造で24.9kg/㎡を実現(一般的な瓦は60kg/㎡)した株式会社鶴弥の「美軽」など、現在は軽量な瓦が数多く開発されています。屋根面積が120㎡の場合、瓦が20%軽くなると、屋根全体で約1トンも軽くすることができるのです。
このように、伝統的な瓦の良さを活かしつつ、現代のニーズにもとづいた瓦の改良が続けられています。
■異常気象による災害への不安
ガイドライン工法の確立により、瓦屋根はある程度の巨大地震や風速46mまでの大型台風にも耐えられるようになりました。しかし、進化する工法や瓦をさらに上回る異常気象の被害が一部で出てきています。
気象庁によると、「猛烈な強さ」と定義される最大風速54m以上まで発達した台風は、2018年に過去最多の7個でした。9月の台風21号は、25年ぶりの「非常に強い勢力」での日本列島上陸となり、大阪府の最大瞬間風速58.1mを筆頭に、関西地方や四国の各地で風速50mを超えています。
安全性が高められた防災瓦をガイドライン工法で施工したとしても、近年日本に上陸している台風の最大瞬間風速を考慮すると不十分です。さらに防災瓦には、ツメが折れて1枚剥がれてしまうと、次々とはがれてしまうという欠点もあります。
職人が瓦に乗った際に誤ってツメを折ってしまうことも多く、肝心なツメが折れているかどうかが表から見えないという問題もあります。
自然災害に対しては、「防災瓦だから大丈夫」と安心せずに、危機感を持った備えが必要です。
■ポリフォーム工法で異常気象にも備える!
それでは、基準を上回る災害にはどのように対応すればよいのでしょうか?
アメリカ・フロリダ州では風速50mを超えるハリケーンが毎年いくつも上陸し、屋根被害が発生していますが、そこで義務づけられた屋根工法に解決策があります。それが、従来の釘やビスの代わりに瓦専用の強力接着剤で固定する、「ポリフォーム工法」です。
ポリフォームは、風速70mの雨風だけでなく、震度7の大地震でもびくともしない接着力が証明されています。
また、瓦の下でポリフォームが膨らみ「面」で支えるため、屋根に固定する葺き土や漆喰、モルタルを使わずに済みます。そうすることで屋根全体が軽くなり、躯体への負荷を減らせるので、耐震性をさらに高めることができるでしょう。
瓦屋根はガイドラインの作成や製品改良によって進化を続けていますが、それだけでは近年発生している台風などのデータと照らし合わせてみても不十分と言わざるを得ません。
もし瓦屋根に今できる万全の対策をするなら、風にも強く屋根全体の軽量化もできる「ポリフォーム工法」を組み合わせることをおすすめします。異常気象や度重なる災害に備えた、安全で安心できる屋根づくりを目指しましょう。
【ポリフォーム日本代理店会】
http://www.polyfoam.jp/