瓦屋根の積年の課題「瓦を飛ばさない」を実現する屋根工法とは?

各国で古くから使われてきた瓦

数千年も昔の太古の時代から、世界各地の住まいの屋根材として使われてきた粘土瓦。

粘土を一定の形に固めて焼いたその建材は、耐候性、耐火性、断熱性に優れ、250kg~300kgの曲げ破壊荷重にも耐える強度も持ち合わせている、他に類を見ないほど高品質な屋根材です。

 

しかし、課題もあります。

強風による浮き上がりや地震によるズレです。

 

地震被害

 

つまり、この優れた建材をどうやって屋根に固定するかが、人類にとっての積年の課題でした。

日本では、平成11年(1999年)改正建築基準法に対応した、屋根瓦の施工基準「ガイドライン工法」が制定され、耐震性や耐風性を飛躍的に向上させました。

 

その結果、阪神・淡路大震災クラスの巨大地震、震度7にも耐え、沖縄県や南西諸島を通過するような大型台風の風速46mにも耐える施工が確立されました。

 

瓦補強 瓦補強写真

(ガイドライン工法の一例)

 

 

■施工基準を上回る、自然の脅威

 

施工基準が確立され、安全性が高まった粘土瓦ですが、自然界では何が起こるか分かりません。

地震の脅威については皆さんご存知のことと思いますが、意外と見落とされがちなのが、強風です。

 

近年の例では、2015年9月の台風21号。

与那国島で最大瞬間風速81.1mを記録しています。

この台風21号は「最大風速」(10分間の平均風速)でも、風速54.6mという数値をたたき出しています。

 

ほかにも気象庁の「歴代全国ランキング」を見ると、最大瞬間風速1位の91.0m(富士山)を筆頭に、かなりの頻度で風速60m以上の強風が訪れていることが分かります。

 

気象庁発表歴代風速順位

このような自然の脅威を考えると、万全の対策のためには、ガイドライン工法を上回る強度の必要性を意識せざるを得ません。

 

 

■ハリケーンが頻繁に上陸するフロリダ州の対策とは?

 

主要ハリケーンの進路

北大西洋(1851-2013年)及び北東太平洋(1949-2013年)における、熱帯低気圧の進路。黄色はカテゴリー3(風速50m)以上。出典:National Hurricane Center

 

同じように強風で悩まされているのが、アメリカのフロリダ州です。

 

フロリダ州では毎年のように巨大ハリケーンが訪れますが、注目したいのは、その風速。

風速50mは当たり前で、2004年のハリケーン「チャーリー」は、なんと風速130m(!)を記録しています。

フロリダ州の主要ハリケーン

 

なお、記憶にまだ新しい「カトリーナ」(2005年ルイジアナ州上陸)は風速55m、ハービー(2017年テキサス州上陸)は風速58m。

さらに、2017年9月10日にフロリダ半島に上陸した「イルマ」は、風速58mでした。

 

ここまでハリケーンが大きければ、被害も甚大です。

建築基準も、当然それに見合ったものが必要となります。

 

そこでフロリダ州の自治体が着目したのが、1992年にアメリカで開発された「ポリフォーム」です。

瓦を下地材に強固に固定する強力接着剤で、現在、フロリダ州沿岸地域の3つの郡で、条例により瓦屋根の施工時に使用が義務付けられています。

 

そこまで信頼されている強力接着剤「ポリフォーム」とは、一体、どのような特長があるのでしょうか?

 

 

 

■ポリフォーム工法の7つの特長

ポリフォーム

アメリカ・フロリダ州の条例で使用が義務付けられた「ポリフォーム」は、ハリケーン対策として開発された瓦専用のポリウレタン接着剤です。

その実力は、「世界最強の瓦留め工法」と評価されています。

早速、その特長を見ていきましょう。

 

1.台風・地震・竜巻に驚異的な耐性を発揮

平部はもちろん、瓦屋根の弱点と言われる棟やケバラ、谷、軒先も、どんなに強い台風や地震、竜巻が来ても安心です。

その実力は、2002年にグアム島を襲った台風「ポンソナ」(風速80m)でも実証されました。

 

従来の工法では風速55mで瓦が飛びました。

従来の工法では風速55mで瓦が飛びました。

ポリフォーム工法では、理論上風速130mでも瓦が飛びません

ポリフォーム工法は、理論上風速130mでも瓦が飛びません。

 

2.釘穴が開かないため雨漏りの恐れがない

屋根工事で一番漏水を誘発してしまうのが、釘穴です。

ポリフォームは下地の野地板やルーフィング(防水シート)、また既存の屋根材の上に新たに屋根材を重ね葺きするカバー工法の場合でも、既存屋根材に釘穴を開けずに施工が可能なため、漏水の恐れを徹底排除できます。

 

クラブメッド

 

3.優れた断熱性能

ふくらんだ泡が断熱材の役割も果たすため、屋根の断熱性能が向上します。

 

4.踏み割れなし

屋根材をクッション性の高いフォームが「面」で受けるため、施工時や点検時の瓦の踏み割れを防止できます。

 

クッション性

 

5.瓦屋根の軽量化と棟部分の耐震性の向上を実現

和型(純和風の屋根瓦)の棟部には、これまで葺き土やモルタルなどが使用され、屋根の重量増加の一因にもなっていました。

さらにこの棟部は非常に重いにもかかわらず地震に弱く、大きな地震の際には棟が崩れる被害が多く発生していました。

この代わりにポリフォームを使用することで、屋根の軽量化と棟部分の耐震性の向上が実現します。

 

在来工法の棟部施工

在来工法の棟部施工

ポリフォームの棟部施工

ポリフォームの棟部施工

 

従来の葺き土を使った棟の図面

従来の葺き土を使った棟の図面

ポリフォームを使った棟の図面

ポリフォームを使った棟の図面 

 

6.優れた作業性

ポリフォーム工法は、直接野地に泡を吹き付け、そのまま瓦を載せていくだけという簡単な工程です。

施工に合わせた段取りとチームワーク次第で、従来の屋根工法の何倍もの作業性を実現し、大きな屋根ではコストの削減も可能になります。

ポリフォームの高い作業効率

 

7.速乾の接着性能

従来の建築用接着剤では硬化に24時間程度を要していましたが、ポリフォームなら施工後約5分で瓦の上を歩行することが可能。

職人さんの手を止めずに作業ができます。

 

 

耐久性能が高く、施工性にも優れた強力接着剤「ポリフォーム」。

国内では下記で取り扱っていますので、詳細は、リンク先のサイトをご覧ください。

 

・ポリフォーム日本代理店会

http://www.polyfoam.jp/

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