瓦屋根は地震に弱い……このような声を聞くこともありますが、それはテレビ映像からつくられたイメージで、法改正と技術により現在では災害対策が進化していることを、ご紹介いたしました。(http://www.kawara-yane.jp/cat_kawara1/1797/)
とはいえ、日本瓦(粘土瓦)からガルバリウム鋼板屋根に葺き替える「屋根の軽量化」によって、耐震リフォームの助成金を支給している自治体もあるのも事実です。このような助成金制度があると、やはり瓦屋根は地震に弱いというイメージを受けかねません。
一方で国交省は、「地震による倒壊の原因は瓦ではない」との見解を示しています。
はたして瓦屋根は他の軽い屋根材に葺き替えるべきなのか、そのままでよいものか、一体どちらなのでしょう?
今回は、自治体の対応や、耐震に関する国の指針などから検証してみたいと思います。
■屋根を軽くすると補助金が出る?
まずは、屋根の耐震リフォームに対する補助金の具体例を見てみましょう。
阪神・淡路大震災で木造住宅が多数倒壊した兵庫県では、屋根の軽量化により、50万円(定額)の補助金が交付されます。
(引用:兵庫県建築指導課|パンフレット「木造住宅の耐震リフォーム」より)
注目すべきは交付条件で、最も重要なポイントとして掲げられているのが、「昭和56年(1981年)5月31日以前に着工されたもの」とされていることです。屋根に限らず、耐震リフォームの補助金交付では非常に高い確率で、この1981年という時期が鍵を握っています。
この1981年以前と以降では、一体何が違うのでしょう?
(神戸市|「平成31年度神戸市住宅耐震化促進事業補助金申請の手引き」より)
■1981年は耐震基準の大転換期
1981年は建築基準法が改正された年で、これを境に「震度6強から7の揺れを受けても倒壊・損壊を防げる強度」である「新耐震基準法」が用いられるようになりました。
つまり1981年というのは、耐震基準にとっての大きな転換期になるのです。
阪神・淡路大震災では、この「新耐震基準法」を満たしていなかった住宅が被害を受けていたことが指摘されています。また2016年(平成28年)4月に発生した熊本地震における建物の倒壊・崩壊率でも、旧基準と新基準の間に大きな差があることがわかっています。
(引用:国土交通省|熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書)
この「新耐震基準法」は2000年にさらに改定されるのですが、旧基準からの改正でもっとも重要視されたのが、壁の補強・増設・バランスです。
(引用:茨城県土木部都市局建築指導課|パンフレット「あなたの住まいは大丈夫!?」より)
これは、純粋に壁の量を増やすことはもちろん、柱と柱の間に筋交いという斜材を入れることで、横からの揺れに対して強い構造をもつ「耐力壁」をつくるというもの。
そして「耐力壁」をどこか一部分に設けるのではなく、建物全体においてバランスのよい配置にすることで、家全体の耐震性を向上させるという指針です。
さらに「耐力壁」が効果的に機能するように、金物を使った部材の緊結・補強、建物全体を支える基礎の補強も重要な要件として示されました。
■耐震性を担うのは屋根よりも壁? その検証結果は…
実際に地震時における木造住宅の倒壊過程をシミュレーションしたところ、倒壊は屋根の重さではなく、壁の耐震性能に左右されるという見解が導かれました。
耐震性能が低い2階建て住宅において、瓦屋根・化粧スレート屋根・金属屋根と、重さが異なる屋根で検証したところ、なんと、すべて倒壊したという結果になりました。
対して、耐震壁を増やして耐震性を高め、瓦屋根を載せたシミュレーションでは、建物は倒れなかったのです。
(引用:全国陶器瓦工業組合連合会|国土交通省国土技術政策総合研究所などのデータを元に開発された倒壊解析ソフト「wallstat」による検証結果では、耐力壁を増やした瓦屋根の住宅モデルは倒壊しなかった)
実際に2016年の熊本地震でも、化粧スレートや金属などの軽い屋根でも、住宅そのものの耐震性能が低いために倒壊した例が確認されています。
すなわち倒壊の原因は、屋根の重さだけにかかっているわけではありません。
倒壊か否か、その分かれ目となるのは、壁を中心としたバランスのよい構造です。日本防災協会でもこうした観点をもった耐震診断が推奨されていることから、その重要性がうかがえることでしょう。
■瓦屋根のウィークポイントに先手を打つ
とはいえ、家屋の耐震性が同じ場合、屋根が軽いほど建物の揺れが小さくなることは事実です。また1981年以降に建てられていても、不安が拭いきれないという方もいらっしゃることでしょう。そこで瓦屋根の、地震時のウィークポイントを洗い出し、そこを克服することで、より安全な手を打つことを考えてみましょう。
地震で瓦屋根が崩れるとき、そのほとんどが「棟部」に集中しています。つまり、屋根の耐震性を高めるためには、「棟部」の補強が必須です。
瓦屋根にはいくつかの工法があり、旧工法として「大回し工法*」がありましたが、現在では標準工法として2001年に策定された「ガイドライン工法」を業界団体では推進しています。
「ガイドライン工法」では、冠瓦が棟芯材、棟補強金物を通してビス(パッキン付ステンレスネジ)で躯体に緊結し、のし瓦同士は棟内部で緊結線により連結します。その結果、旧工法に比べて耐震性・耐風性が高められ、震度7クラスの大地震に耐え、地域ごとの基準風速(30m~46m)にも対応できるとしています。
しかし直下型地震では局地的に阪神・淡路大震災の数倍の加速度が確認されることもあり、また近年の異常気象の影響からか、最大風速50m~60mを超える大型台風の上陸も増えています。このことからガイドライン工法はあくまでも最低限の指標であり、国をはじめとする公的機関が示す見解・指標の一歩先を行く備えが重要となっています。
(風圧実験結果|ビス2本打ちのガイドライン工法でも、風速50mになると瓦が暴れだし、風速60mを超えるとビスが抜け落ちて瓦が次々と飛ばされます)
■棟部の強化+軽量化で、より安全に
ポリフォーム工法は、ハリケーン被害の多い米国フロリダ州の条例で義務化されているほどの、強力な瓦留め工法です。
特に和型の棟部では、土やモルタルの代わりに使用することで屋根の軽量化も実現、瓦屋根の弱点とされる棟瓦の崩れとも無縁です。
(瓦屋根標準設計施工ガイドライン棟回転試験の様子|ガイドライン工法では7段積みまでしか実証されていませんが、ポリフォームで施工した16段積みの棟は要求基準を楽々クリア。阪神淡路や東日本大地震クラスの地震でも全く問題ありません)
さらに、釘やビスを使わず高性能の接着剤を使用するため、雨漏りの心配もありません。断熱効果も高いので、暑さ寒さが厳しい時期でも快適を保てます。
瓦屋根は風土に育まれ、各地域で美しい家並みをつくってきた日本の住宅になくてはならない部材です。ポリフォームの最先端のテクノロジーと組み合わせ、美しい佇まいと安全性を備えた住まいを叶えてみてはいかがでしょう。
【ポリフォーム日本代理店会】