最近は、「瓦」を間近で見たり触れたりする機会が少なくなっています。マンションが増えたことや、一般住宅でも瓦を葺かれることが少ないことから、身近な場面で瓦を見る機会は減ってきています。
そこで今回は、あまり知られていない瓦のルーツや製造方法など、「瓦の基本」についてご紹介したいと思います。
■日本最古の瓦は飛鳥時代!瓦伝来の歴史
瓦はもともと、古代ギリシアやローマで青銅や鉛製のものがありましたが、主に中国やその周辺地域で発達していったのが最初です。世界で最も古い瓦としては、約2800年前の薄手の平瓦が、中国の西安近郊で発見されています。
そんな瓦は、日本には6世紀末の飛鳥時代に伝わったとされています。『日本書紀』には「百済から4人の瓦博士が渡来した」との記述があり、飛鳥寺の瓦が日本最古のものと伝えられています。その後は、都のあった近畿地方を中心に、地方にも瓦が広まっていきました。
西暦694年には藤原京の宮殿で初めて瓦が葺かれ、平城京、長岡京、平安京でも使われました。桃山時代以降は戦国武将が城に瓦を採用するなど、主に寺社仏閣や宮殿、城で使用されるようになりました。その後江戸時代に軽量化した「桟瓦」が発明されたことで、次第に一般の家屋にも普及していきました。
■代表的な瓦の種類
瓦といえば、そのほとんどが粘土を使った「粘土瓦」ですが、製造方法によって更に大きく2つに分けられます。
・釉薬を塗った釉薬瓦
粘土瓦に「釉薬」という、うわぐすりを付けて焼く瓦です。瓦表面に塗る釉薬はガラス質のため、水が浸透せず耐久性に優れています。陶器瓦や瑠璃瓦とも呼ばれています。
・釉薬を塗らない無釉瓦(むゆうがわら)
一方、釉薬を使わずに焼き上げる無釉瓦もあります。その中でも有名なのが、最後に「いぶす」ことにより、瓦の表面に炭素の膜を作る「いぶし瓦」です。渋い銀色で、城や寺院、和風住宅に多く使われています。その他にも、赤瓦と呼ばれる素焼き瓦などもあります。
粘土を使う伝統的な粘土瓦に対し、セメントやコンクリートを原料としたセメント瓦・コンクリート瓦も一時期流行しました。しかし、雨水が染み込みやすく塗装が必要で、色褪せや定期的なメンテナンスの手間がかかるため、今はあまり使われなくなっています。
■瓦ができるまで~釉薬瓦(ゆうやくがわら)の場合~
それでは、瓦はどのように作られているのでしょうか。例として、釉薬瓦の製造方法を見てみましょう。
1:採掘した粘土を配合・土練
採掘された良質な粘土を混ぜ合わせ、すり潰す工程を繰り返します。その際、水分量で粘土の硬さを調整していきます。練る作業により、空気が抜けて粘りの出る粘土になります。
2:成型・乾燥
練り上げた粘土を板状にし、プレス機で瓦の形にしていきます。水分が多いと焼いた時に割れてしまうので、焼く前に1〜2日かけて乾燥させます。
3:施釉(せゆう)
乾燥後、瓦に色を付けるための釉薬を付けます。瓦は釉薬によって様々な色彩にすることができ、艶を出すこともできます。
4:焼成・完成
1000℃以上の高温で、1日以上かけて焼き上げれば完成です。高温で長時間焼き締めることで、寒冷地でも凍結によって割れない丈夫な瓦になります。
■瓦の種類〜形状によって変わる呼び名〜
瓦は、形によっても呼び名が異なっています。
・J型瓦(和形)
日本で最も普及している和風の瓦です。ジャパニーズのJをとってJ型と呼ばれています。緩やかな波型で水切れが良いため、雨の多い日本に適した形の瓦です。
・S型瓦(スパニッシュ形)
大きく波打った形で、Sはスパニッシュを意味しています。西洋建築とともに入ってきた瓦を日本で改良したもので、赤土色が多く、洋風の家に似合います。
・F型瓦(平形)
J型やS型と違い、直線の平らな瓦です。「フレンチ」という平板瓦が日本に伝わり、フレンチのFや、「平らな」という意味のフラットから「F型」と呼ぶようになったとも言われています。瓦が平板なため、直線が美しくすっきりとした印象に仕上がります。
■伝統的な瓦の産地!日本の三大瓦
「日本の三大瓦」とは、三州瓦(愛知県西部)、淡路瓦(兵庫県淡路島)、石州瓦(島根県西部)のことです。瓦の産地によって使用する土が異なり、土のきめ細かさや耐火温度によって、瓦の性質も変わってきます。
三州瓦は、日本の中心地域という愛知県の立地の良さや、良質な粘土が豊富にあったことから、現在では国内の瓦出荷額の約7割を占めています。
淡路瓦は、いぶし瓦に適した「なめ土」と呼ばれるきめ細かい土でつくられています。その質の高さから、淡路島は全国有数の瓦の産地となりました。
石州瓦は、耐火度の高い粘土を1200℃以上の高温で焼くことで、寒冷地でも耐えられる強い瓦となり、積雪の多い地域で使われてきました。釉薬(ゆうやく)に砂鉄を調合して作られた赤褐色の「石州来待瓦(きまちかわら)」としても知られています。
有名な三大瓦以外にも、黒光りする能登瓦(石川県)、鉄色で表裏に釉薬を塗る安田瓦(新潟県)など、日本全国それぞれの産地で特長ある瓦が作られています。
■施工方法による瓦の進化
「日本固有のもの」というイメージがある瓦ですが、実は外国から長い年月をかけて日本に伝わってきたものです。それぞれの時代のニーズに合わせて形を変えながら、日本の風土に合うように発展してきました。
最近では施工方法にも新しい技術が伝わり、瓦をポリフォーム施工することによって、地震や災害に強い屋根にできるようになりました。
風にも強く、屋根全体を軽量化できるポリフォームは、屋根材の裏側に注入することで美観を損なうことなく屋根を補強できます。その証拠に、円福寺(千葉県銚子市)、東京大学七徳堂(東京都の歴史的建造物)、兵庫県公館(国の登録有形文化財)などの歴史的な建造物の施工実績もあるほどです。
瓦屋根の伝統を守りながら新しい技術をとりいれることで、日本の災害にも強い屋根作りができます。日本の気候に適した、メリットの多い瓦屋根。この機会に、瓦の良さを見直してみてはいかがでしょうか?そして、瓦屋根を施工される場合は、台風や地震などの災害に強く、屋根全体の軽量化も図れるポリフォームをぜひご検討ください。
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